【東京ベイスペシャル 2010】

昔々、ソルトウオーター用のルアーがまだ少なかった頃の時代の話である。スズキに使えるのは国産品はダイワ・バルサミノーシンカーかオリムピック・フレクトライトミノーくらいしか無い時代も終わり、「シーバスルアー」というカテゴリの黎明期となり、鳴り物入りのK-TENがまだ2200円くらいで果物屋のマスクメロンみたいな頃、リョービが750円くらいの良心価格で販売してくれていたシーバスミノー。その名も「スズキング」−素晴らしい商品名だ。モノ自体も見た目通り初期型ダイワ・シーバスハンターにインスパアされまくった代物であろう。「東京ベイスペシャル」というセカンドネームも何故付けていたのかさっぱり判りませぬ。
悪口みたいな書き出しだが私はコレを買いに買いまくって釣りに釣りまくった逸品である。理由は簡単でスローシンキング気味でバランスは悪くなく、安価なので大胆に使いまくれるので必然的にベストヒットルアーに当時はなっていた。
同時期のマリアオフィス(たしか実体はヤマシタ釣具)のザファーストやプリンセスMでも結構釣れていたが、それらの半額くらいで買えるこのルアーの方がはるかに使用率は高い。消耗品であるルアーのコストはやはり重要である。(ヒドい時は使用開始後数分間で消える時がある!)淡水魚も海水魚もルアーで釣れる魚は捕食の性質上、根掛かりし易い場所程よく釣れるので仕方なしであるが。
ところがある日突然生産終了となり「スズキングU」にフルモデルチェンジ。で、「スズキングU」はなんとちゃんとシンキングミノーになってしまっていたのである。こりゃダメだ。「スズキング」が逸品だったのは多少飛距離が伸びなくても浮力のあるスローシンキングで独特の存在価値を持っていたからである。従ってUとなって他のシンキングミノーと同じ土俵に上がってしまえばただのワゴンセールの無印品と変わらずラパラカウントダウンやアスリートシンキングに遠く及ばない。強いて言えばダイワ・シーバスハンターUよりかはマトモに動くかなという程度であった。
数年後に店頭から消え、そしてルアーケースから消え、記憶からも消えかけた頃に初期型がネットオークションに出ていたので久々に購入してみる事にした。 赤白が欲しかったが選択の余地はなく赤金で入手。丁寧にパッケージに戻してあったが中古品を薄く研磨して再ウレタン処理を施し新品ぽくした代物のようだ。別に破損してるワケではないので文句は全くないんだけどね。
特殊ミッションとして今期はこればっかりキャストし続けようと思う。

(9月25〜26日)
数日前に日本中を荒らしたゲリラ君のダメージが残るのだが現物が届いた翌日に早速キャストしにゆく。場所は自宅から車で3〜4分(健康の為に自転車で行った方がいいのだが)の大河川の河口から約6km程の地点。川と言っても川幅がかなり広いので殆ど海だが汽水域であるのは間違いない。ルアーがコレであるためリールは少しでも飛距離が延びるように大径スプールのヴァンスタール、ロッドは基本短竿野郎な私だが昔買って「これで釣ってもツマらない」という理由で今ではすっかり鈴を付けてウナギ釣りにしか使わないシーバスロッドを引っ張り出す。グリップには若干エサの匂いが染込まれているぞ。ちなみに掛かった大きなウナギをバラさないように一発で浮かせるにはシーバスロッドはかなり都合がよい。これでは大型スズキを釣っても僅かな時間で処理してしまう訳やねぇ。
久々にキャストして思ったのだが切ないくらい飛ばない。ラパラCD7に若干劣るくらいだろうか、フロントヘビーで飛行姿勢が悪く最後の伸びがまるで無いのだ。とにかく9cmのシンキングミノーとしては素晴らしく飛ばない。そして数時間このルアーだけを投げ続けるも結果ノーバイト。間違いなく先述の理由と季節変動で水温が急激に低下した為だろう。魚はヘビやトカゲのような変温動物なので温度が上がった下がったが問題なのではなくて安定しないと生体機能が著しく低下してしまう。もっとも淡水魚と違い海の魚は弱る前にとっとと快適な水域まで移動してしまうだろう。それとは関係なく今回のミッションに問題が発生した。ひたすらキャストし続けて思ったのだが赤金はよく釣れるカラーだがそれは特定の条件下に於いてであり万能ではない。万能性に於いてはアトラクターカラーに分があるような気がするので翌日塗り替える事にした。一液ウレタンも切らしていたのでわざわざ買いに出かけて塗りました。私の記憶ではこのルアーの赤の部分の比率は少なかった筈で、写真の比率は限りなく正解に近いと思う。まぁせっかく着色したがこの界隈の潮周りが合わなくなったので今日から暫くは釣りに出かけれないのだが‥ (本当は塗った日の夜にチョロっと行って水銀灯の下で一尾だけ30cmくらいのポンと上げたのだが、メジャー当てるのも写真撮るのも面倒臭かったので即リリースで無かった事にする)

(9月29日)
剥がして塗りなおし。
どういう事かと言うと、よりリアルな復刻を目指すならば本来のリョービ・スズキング−東京ベイスペシャルのレッドヘッドの白い部分は黄ばんだパールホワイトなのだ。市販の塗料にそんなヘンな色はない。まず白で塗装してうすーくゴールドを吹きかけてそれっぽく見せる事にした。よくこのルアーを知る人に右の写真を見せれば「ほんの少しだjけ黄ばませ過ぎじゃねーか?」と言われると思うが、上の写真の純白よりはオリジナルに近いのでまぁいいでしょう。

(10月4日)
まだ潮は合っていないのだが近場だから様子見に行く事にする。飛距離の為にナイロン派の私がやむを得ずPEの一号を買ってきたのだが、ベールが無く夜のキャスティングで使うヴァンスタールに巻くとトラブる予感がビンビンするのでペン4300SSに巻き、スペアリールはたまたま目に留まったカーディナル3としてこちらにも巻き込む。
午後6時45分に到着してキャストし始めると僅か2投目でヒット。45cmと小ぶりだが連釣すると思いきや全く続かない。どうやら居着きだったらしい。次の群れが回ってくるまでキャストすると30分後にまわってきたらしく「ゴツン」とショートバイトが何回か伝わってくるがフッキングしない。レンジが合っていないのだ。スリム系のフローティングミノーに変えれば一発で喰わせる自信があるのだが、今はこの企ての真っ最中なので我慢してロッドを高く保持したりしてナントカしようと色々するが、流れが速いとどうにも上手くいかない。今時のルアーはウエストバックにたんまり入っている。その気になれば数秒で交換できるのだが結局スズキングで押し通した。
結果、一尾で終わり。我ながら大した精神力だ。次回からは水深のあるシンキングミノー向きの場所でやる事にしよう・・・


(10月6日)
いよいよ潮が合い始めました。午後7時くらいからうちの近所を徘徊し始めたのだが、どう考えても調子よく釣れていい状況なのにどうにも調子が出ない。夏が長引いた為に釣期がずれているのかも知れない。
適当に場所移動をしてなんとか一尾釣れて、そこそこ引っ張り回されるとPE慣れしていない私はやはり1号の細さはどうにも心細いので普段より慎重に取り込んでメジャーをあてると67cmであった。もうたった3cmあれば70なのにまぁそんなもんでしょう。 こんな感じでたまにドデカいのが釣れるがメジャーをあてるといっつも97cmとか95cmとかで釣れた魚に「あと数センチだけでしょうが!」と何度も文句を言う私はメーターオーバーのスズキを一度も釣った事がない。確実にメーター越えてそうなのはリーダー掴んでランディング時に大暴れされてサヨナラとかそんな感じ。理不尽なり。
結局、本日も一匹のみ。本当にハイシーズンになってないのかスズキングのみで釣ってるのが悪いのか・・・

(10月8日)
スズキングではなく、この時期にしてはどうにもパッとしないので調査を行うことにした。ルアーはラパラCD5、潮は満潮まわり、場所は軽く潮が回るような場所、釣り方はロッド立て気味スローリトリーブ。
案の定、30cm台のサイズが数匹釣れた。完全に夏のパターンである。十月中旬にもなろうかという時期にこの界隈の水の中はまだ夏のようだ。まぁ釣期がずれているのを確信したかっただけなのだが。今年はたまたまこんな調子なのか、チキューオンダンカとやらでこれからもこんな調子なのか定かではない。


(10月16日)
釣期が遅れたり大雨で濁流に見舞われたりウチの近所は悲惨な状況で、本日も潮はイマイチ合っていないのだが様子見に行くことにする。
小潮のユルユルの潮流の中でポンと釣れました。流れの緩い状況でジリジリとラインを出されるので大型かと思いきや、ランディングしてメジャーを当てると47cmと少々小ぶり。キャストを再開して数投でまたヒットして無事に釣り上げると41cmと更に小ぶりに・・・
ほどなくして完全に潮止まりで終了。こんな状況で僅か30分足らずの間に小ぶりとはいえポンポンと釣れたのでシーズンインとみなし、いよいよこれからなのだがこの企ては本日を持って最終回とする。理由はスズキングばかり投げ続けるのは飽きたというか流石に嫌になったぞ。

【まとめ】

私はスズキングと同年代のシンキングミノーでもK-TENやラパラCD9やザ・ファーストでコレをやっていればもう少し楽だったのではないかと思う。やはり淡水域ではなく大場所では飛距離が欠くと大分不利になってしまう。どちらにせよシンキングミノー主流の80年代の釣り方を現代に敢行しても無駄にストレスを生み出すだけなのでここらで終わりとしたい。
ただ、リョービ・スズキングよりも不利であると思われる当時モノのダイワ・シーバスハンターやデュエル・CSミノーでルアー縛りを敢行する人がいれば素直に尊敬するぞ。私は





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