故・西山徹氏がスズキを"ジャパニーズ=コモン=シーバス"と名付けたらしい。
しかし、氏には申し訳無いが私はシーバスという呼称は好きではない。 移植されたノーザン・ラージマウスバスの方を"沼スズキ"と呼ぶべきとさえ 思っているくらいだ。まぁ人間がなんと呼ぼうが、自然の営みには一切の影響が 無いのでどうでも良い事だが。それにしても、スズキと言う魚はどうにもバスっぽく は無い。あれほどのどう猛さはなく偏食家で気分屋である。つまりルアーフイッシングの 対象魚としてはバスに比べて不完全ではある。それを面白いと思うか、つまらないと 思うかは人それぞれであろう。

最近、どうしたらルアーでスズキが釣れるのか?という質問がよく寄せられる。 昔は重心移動という概念が無く、シンキングミノー一本やりでロストにビクつきながら バスタックルで細々と釣ると言った感じだったが、今はルアーのみならずロッド、リール、 ラインに至るまで専用のものが次々開発され、それに伴い釣方も多様化がすすみきった感じがする。 一般人の私がそれらを全て解説するのは間違いなく不可能に近い。それでも長年やってきてみて、多分こうではないか? と言う事があるので書きなぐってみる。(あくまでも私見なので”絶対こうだ”という言い方は極力避けます)

@多分、そうだろうと思う

・(最重要ファクター) 全ての釣りに共通する最も重要な事柄は、キャスト出来る範囲内に摂餌行動する魚がいる事である。 しかし、コレばかりは解説のしようがなく、季節変動、水温、透明度、周辺の地形、水底の地形により千差万別である。たとえば、 ある河口は満潮周りが絶好調だが、隣接する河口は干潮でないとダメみたいな事が起こる。ここと決めた場所にひたすら通って粘って下さいとしか言いようがないのである。

・(レンジについて) 泳層である。非常に重要である。時折、釣り場で話かけられると割と多いのが”ずっとエサ釣りだったんだけど、ルアーはデカいのが釣れると聞いたので始めたのはいいが、 全然ダメ。エサに戻ろうかな”と言う事である。彼らの行為を見てみると、釣り道具屋の店員に薦められたルアーを漠然と投げてグリグリと引いている。不思議である。彼等が電気ウキを流してた時は マメにウキ下を調整してた筈で、5cmのタナの差が明暗を分ける事を知ってた筈である。釣り方を変えただけで何故そんな重要な事を忘れてしまったのだろう。釣り方は変わってもタナは極めて重要である。 フローティングミノーのフックサイズを変えただけで大差が出るものである。彼等も数種類のルアーを持参し、それらの特性を理解し、リトリーブスピード、ロッドの角度によりマメに調整できれば確実に道は開ける筈だと思う。

・(カラーについて) 昔はカラーに拘っていた時がある。今はというとメンドくさいからやめた。概ね次ぎの4パターンに割り切っている。白系(パールホワイトを基調としていれば、レッドヘッドだろうとチャートバックだろうと同じとして更にクリアゴーストも含めている) 光モノ(メッキ、レーザーカラー)ダーク系(要は黒っぽい色)赤金(光モノに加えず独立させてる。偏って釣れる時があるため)これらをその場所の明るさ、水の透明度を基本にして使ってるだけ。ただそれだけ。

・(サイズ、タイプについて) 私は少々その場のベイトの大きさと違ってても差し支えないと思っている。形も同様と思っている。私はこれらの概念をレンジ(泳層)を合わせるための副次的な概念だと捉えている。

・(アクションについて) ロッドアクション等でなく、ルアーそのものの動きについて。昔から現在までの超定番ルアーでCD(カウントダウン)ラパラがある。使ってる方は皆知っていると思うが、かなりのタイトウォブリングアクション(小刻みな尻振り)である。 早い段階からラパラに洗脳された私はウォブリングだろうとローリング(回転)だろうとタイトな程スズキ向きではないかと思い、新調したルアーも少しでもワイドと見るやいなや、即リップの両サイドを削り落としタイトに改造する事を現在も続けている。こればかりはこちらの方がイイと断言出来る確証は無い。

・(リトリーブスピードについて) かなり悩んでいる人が多いようだ。私はかなりのファーストリトリーブ(早巻き)でも釣ってる。デッドスロー(超遅巻き)でも釣っている。何度も言うようだが、私はレンジを最重要視している。私にとってリトリーブスピードはそれを調整する手段に過ぎない。 私の使用しているルアーでリトリーブスピードに気を遣わないルアーはトップウォータープラグだけだろう。

A未だに理解出来ません

・(ルアーの移動方向) 流れのある場所なら、右に投げるか左に投げるかでルアーの動きもレンジも変わるので理解出来る。が、止水場所でも 右に投げるか左に投げるかで偏るのである。違いはルアーの移動方向だけという事になる。スズキの捕食中はどちらか方向に意識してるとその方向に偏るのだろうか?

・(ナチュラルカラー) 自然にいる生物を模ったカラーのルアーである。”鮎が落ちてきてるからアユカラーがいいよ”と言われた事がある。果たして本当にそうだろうか? メッキ系のイワシカラーとサバカラー、どちらを使っても一緒のような気がしてならない。その色の魚だと思ってヒットしてきているか疑問でもある。 バイブレーションプラグのゴーストアユカラーをスズキが”アユだ!”と認識して捕食してるとどうしても思えないのだが。昔、レーベルのディープRというバス用ディープクランクベイトの ナチュラルカラーで”カエルカラー”があった。確かにカエルも水中に潜るだろうけど・・・

・(レッドヘッド) スズキをルアーで釣っていると、上手くフッキング(針掛かり)しない、バラシが多いという事に直面する。 バスと違い、ルアーが丸呑みされるケースが少ないからだ。夕方や水銀灯のある場所で何度か目撃した事があるが、スズキはある程度の大きさがあり、 元気のある小魚を口先やエラのあたりで体当たり気味に攻撃し、弱らせてから捕食する習性があるようだ。先述の場所でボラやウグイがボコボコにスズキにタコ殴りにされるところを何度か見た。 それを目撃する度、丸呑みヒットしない事に頷いているワケだが、やられた小魚は概ね頭から出血している。レッドヘッドはひょっとしたらナチュラルカラーではないだろうか?

・(ルアーと使用者の関係) 複数名の同行者と釣行した経験はお有りだろうか?同じ時間の同じ場所で釣っているのに関わらずヒットルアーがそれぞれ違う経験もお有りだろうか。ある同行者がダイワ-ショアラインシャイナーで連釣してる横で同じルアーを試しても私にはカスりもしなので、使い慣れたタックルハウス-Mに換えた途端に釣れ出したなんて経験はザラにある。キャスト方向、リトリーブスピード、ロッド位置、同じ行為をしているようで何かが違うのであろう。この場所ヒットルアーは○○だと言われて模倣するは早計ではなかろうかと思ってしまう。その状況に於いて絶対自信のあるルアーを使った方が良いように思える。かと言ってそれに固執すると幅が狭くなりすぎなので私は試験的なルアーを複数個持参し、一尾でも釣ったら極力その日はそのルアーは使わないようにしている。極力ね。

・(何の為に釣るのでしょう) 古山輝男氏の著書に「シーバスハンティング」という本がある。その中の一節に”釣れるタックルと楽しめるタックルは違う”といったくだりがある。 私も全く同じ意見である。人間は飽きる生き物である。最初は面白い事でも反復してるとつまらなくなるものである。私はより強い刺激を求めて、釣りそのものの難易度を上げていった。 自分は大きなトップウォータでしかバスを釣らないと言うバサーもまさしくこれに該当するだろう。ライトアクションのトラウトロッドで大型スズキを釣ると非常に面白い。だが、 標準的なタックルを使ってて楽しいうちはマネをするべきではない。ただの苦痛でしかないからだ。この先、私のスタイルは更にどう変わっていくのかは今は分からない。 リール使用不可縛りを受け、最高の難易度を誇ると思われる「延べ竿でルアー」まで突き進むのであろうか。おぼろげながら思うのは 真に釣りを極めたら、釣り場にも行かず、道具も使わず瞑想の世界で観念的に楽しむ事が出来るんではないかと思う今日この頃である。(結構、本気でそう思っている)


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